オモチャのチャチャ・チャ


 目に痛い極彩色の薔薇の森を抜け、そのまましばらく道を進んでいくと、開けた砂漠に出た。行った事はないが、砂漠島というのはこんな感じだろうか?
 ずっと向こうに、木々や建物が見える……気がするが、熱で歪んだ空気のせいで、ハッキリとは分からない。

「さっきから思ってはいたけど、この世界には、気温とか温度ってモンが無いのか?」

「無いな、確実に」

 砂の上に不自然に伸びたレンガの道を歩きながら、イェットが断言した。
 撃とうが斬ろうが殴ろうが燃やそうが顔色ひとつ変えないイェットだが、それは別に痛覚や温感が無いわけではなく、むしろこいつの感覚器はとても鋭敏に出来ている。ただ、表情に出ないだけで。
 そのイェットが断言するのだから、本当にこの世界に温度は存在しないんだろう。だがあたしは、視覚から入ってくる情報だけで暑くなれる性質なので、何となく暑いような気がする。

「チャチャっ? ……うっわ、キッツ」

「どうしたの、イー……チャチャさん? うわ、キツ」

 向こうからやってきた双子が、声を揃えてそう言った。

「なぁ、トト……? あたし、そこまでキツいか……」

「かなり」

 ひらひらの服を掴んでそう聞くと、我が弟は真顔で小さく頷いた。
 そうか……姉ちゃんお前の前でスカート履いてたこと無いもんな? ちょっと慣れてないだけだもんな? そうじゃなきゃ殺す。

「に、したってイーズ……お前、いつ分裂した?」

「「さぁ……」」

 同時に応え、全く同じ仕草で首を傾げるイーズ×2。

 そもそもイーズは、ひとりっ子だ。双子の兄弟なんて居ない。
 1人分の体の中に、呪いによって2人分の人格を押し込められてるのが、イーズだ。どちらかが起きてるときはもう片方は寝てるので、特に呼び分けもせずに『イーズ』と呼んでいたが……。

 まさか、いきなり分裂するとは。

 さて、ここで1つ、言っておきたいことがある。
 あたしの同僚、イージー・ラウリルは、男だ。まぁ、かなりの女顔と童顔、そしてほっそい体にうるさいほうのイーズの趣味もあって、普段は女にしか見えないが、男だ。

 だが……今目の前にいる2人のイーズ。片方は『確実に』女なんだが……。
 外見が完全に女のイーズの片方が、なぜ確実に女だと分かるか、というと、片方のイーズに胸があるからだ。ここは便宜上、うるさいイーズを女イーズ、大人しいイーズを男イーズと呼ぼう。女イーズは基本的に女装しているが(精神は女だとかなんだとか)、胸に詰め物はしない主義だから、間違いないだろう。



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